旧盆⑩ ウークイにはウチカビを
2019年08月15日
こんにちは、マルキヨ製菓広報担当の仲宗根です。今日は8月15日。終戦記念日でもあり、お盆の最終日でもあります。沖縄では「ウークイ」と呼ばれ、ウンケーでこちらの世界にやってきたご先祖様が、再びグソー(あの世)へ戻る日となっています。
ちなみに今日のマルキヨ製菓は、一部スタッフのみ出勤日で、急な注文やトラブルに備える形となっています。これまでの例からすると、けっこう遅い時間まで対応する事になるでしょう。
ウチカビ
日が落ちると、ご先祖様はこの世の人達と過ごした時間に別れを告げる事になります。そして、ご先祖様を送り出す時に我々が燃やすもの、それが
ウチカビです。今日の夜は、沖縄のいたる所でこれが燃やされる事になりますし、私も燃やす予定です。
何故、ウチカビを燃やすのか?
ウチカビを燃やす理由は、あの世へ旅立つご先祖様へ資金を渡すためです。そう、ウチカビは「燃やして使えるあの世のお金」なのです。
正面からの写真をご覧下さい。「紙銭」と書いているのが見えるでしょう。ウチナーグチでは「カビジン」と言います。その名の通り、ウチカビとは「紙で出来たお金」の事なのですが、もう少し正確に言うと「燃えやすいお金」となります。
生きている人間からすると「燃えやすいお金」というのは、「いやいやいや、それは駄目でしょ」となりますが、グソー(あの世)へ旅立つご先祖様にとっては都合がいいのです。そこら辺、もう少しくわしくお話ししましょう。
紙のお金を燃やす風習は中国からやってきたものです。古代中国では「この世にある物を燃やすと、あの世でも使えるようになる」という考えがあり、それが今でも残っています。
従ってお金を燃やせば、燃やした分をお金としてグソーで使えるというわけです。日本だと沖縄や奄美の一部地域、そして中国はもちろん、台湾や韓国、ベトナムにも「紙のお金を燃やす風習」はあるそうです。
というわけで、ウチカビはワラ等を材料にして、燃えやすいように出来ています。そして
銭を型どったデザインも沖縄の人にとってはお馴染みですよね。沖縄は旧暦で盆を行いますが、盆の最終日にあたる旧暦7月15日をウークイと呼び、日が落ちた頃にウチカビを燃やす事になります。
ウチカビの歴史
14世紀以降、多くの中国人が琉球へ入ってきました。那覇の久米という所へ移住し、彼らを通して多くの中国の文化や風習が入ってくる事になります。その中に、「紙銭を燃やす」というのもありました。
その風習は久米村の士族の間で行われ、やがて首里の士族へと広まったあと、市民にまで伝播していきます。「四本堂家礼」(1726年著)という資料には、「シーミー(清明)の時に、ウチカビを燃やした」という記述があります。
「四本堂家礼」は士族に関する内容を記述したものなので、それが書かれた18世紀前半は、まだ「紙銭を燃やす」というのは士族までで、一般の市民には伝わっていなかったようです。一般市民がそれを行うのは、明治以降だそうです。
ウチカビって、あの世でどれぐらいの価値がある?
「ウチカビはあの世のお金」という事ですが、実際どれぐらいの価値があるのでしょう?
まず、スーパーで売られているウチカビですが、
5パック300円程度で買う事が出来ます。実際に購入し、ウチカビの枚数を数えてみました。まず、1パックで何もしなければ厚さは約3cm。ギュッとつぶして2cm程度。
そしてその1パックの中には20束入っていまして、さらに1束につき、
5枚のウチカビがありました。いくつかの説はありますが、ウチカビ1枚につきあの世で1億円の価値があるとも言われています。では、算数の時間です。まず、5パックの中にあるウチカビの枚数は
5(パック)×20(束)×5(枚)=500(枚)
あの世では1枚につき約1億円として、5パック分のウチカビ、あの世の価値に換算すると・・・
500(枚)×1(億円)=500億円!
何と、驚き! 300円程度で買う事の出来る
こちらのウチカビ、あの世では500億円相当の価値がある事になります。いやぁ、こちらの世界でも同じぐらいの価値があれば・・・ なんて、どれだけのウチナーンチュが思う事でしょう。笑
それにしても、あの世の物価はどれだけインフレなんでしょうか? なんとなく、かるかん1個で1億円ぐらいしそうですね。お菓子1つ買うにも大変です。笑
最近のウチカビ事情
今日は私も祖父の仏壇のあるおじさんの家に訪れ、ウチカビを燃やしてきます。ボウルに水をはって、その上にアルミホイルを敷き、そこで集まった皆で順序よくウチカビを燃やし(チャッカマンを使用)、アルミホイルの上に置いていきます。
「これで、数億円かぁ」なんて思いながら、燃やしている事でしょう。ちなみに、あまりにもウチカビを燃やしすぎると、あの世で「お金を持ってる」と思われ、強盗に遭うかもしれないそうです。あんばいが難しいですね。笑
全てを燃やし終わったら、亡くなった祖父のためにお菓子も置いてアルミホイルで包み込み、玄関先に出ていつもの場所に置き、ヒラウコーという平たい線香に火を付けて側に置きます。
これでご先祖様は、再びグソー(あの世)へ戻っていく事になります。ヒラウコーを焚いてしばらく経った後、外に出していたものを片付けたり、旧盆がらみのものを片付ける。これで、その年の旧盆はおしまいという形になります。
最近、よく聞く話が「マンションなどでは、火災報知器の機能が向上し、ウチカビを燃やすと警告音がなる」というもの。ならばと、ベランダに出て燃やそうものなら、近所トラブルのタネにもなりかねない。
マンションなどにお住まいの方にとっては、ウチカビ1つ燃やすにも、色々と悩ましい背景があるようです。
旧盆特集記事バックナンバー
約1ヶ月、10回にわたってお送りしてきた旧盆の特集記事も今回でおしまいです。バックナンバーはこちらから。
盆の由来となる、お釈迦様の弟子にまつわるエピソード
⇒【旧盆① 地獄へ墜ちた母を救うために】
盂蘭盆会(うらぼんえ)という行事について
⇒【旧盆② 盂蘭盆会(うらぼんえ)】
沖縄独特の踊り「エイサー」について
⇒【旧盆③ エイサー】
エイサーを広めたと言われる袋中上人(たいちゅうしょうにん)について
⇒【旧盆④ エイサーを広めた男達】
「盆踊り」について
⇒【旧盆⑤ 盆踊り】
旧盆は旧暦の7月ですが、本土で行う盆が8月に行われる理由
⇒【旧盆⑥ 旧暦は7月、新暦だと8月に行われる盆】
お盆の1週間前にやってくる旧の七夕について
⇒【旧盆⑦ 旧の七夕】
お盆の時期に子供がもらうお年玉ならぬ「お盆玉」。意外ともらっているようです
⇒【旧盆⑧ 最近のお盆玉事情】
お供え用お菓子を、一挙紹介!
⇒【旧盆⑨ お供え用お菓子】
よいお盆を
マルキヨ製菓は旧盆のため、スタッフ一同、疲労困憊の中、たくさんのお供え用お菓子を作ってきました。その作業は、時には夜遅くまでかかる事もしばしば。
その代わり、明日からの3日間はお休みさせて頂きますので、よろしくお願いします。
おかげさまで、毎年マルキヨ製菓のお菓子の注文は増え続けています。毎回言っていますが、みなさんが良いお盆を迎えられるよう、真心を込めてたくさんのお菓子を作りました。
今日はウークイですが、急な追加注文もよくあるので、数人のスタッフは夜まで待機しています。店頭の旧盆コーナーで、マルキヨ製菓のお菓子を手に取って頂ければ幸いです。
それでは、皆さん。良いお盆を!
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