【旧暦12月8日】 ムーチー(鬼餅)②
2016年01月14日
こんにちは、ブログ担当の仲宗根です。最近、ようやく沖縄も気温が下がってきました。今日の最高気温は17度。本土の方からしたら「温かいじゃん」と思うかもしれませんが、寒がり全国一位の沖縄の人からしたら「超、寒いんですけど…」といった感じです。
特に行事を行う人は、みな口を揃えてこう言っています。
ムーチービーサがやってきた!
もっとも、暑がりの私は半袖で仕事していますが。笑
さて、前回は沖縄の旧暦12月8日に行われる「ムーチー」という行事について、それにまつわる琉球の伝説を紹介しました。
今回は、さらに深く、この行事について考察してみましょう。
前回紹介した伝説は今から約800年も前のお話しで、ここから「厄払い」のために「ムーチーを食べる」習慣が出来ました。実は「ムーチーを旧暦12月8日に食べるように」と、王様が奨励した資料も残っています。
西暦1735年、名君として名高い時の王・尚敬(しょうけい)王の時代の記録に「この年から、十二月庚午(かのえうま)の鬼餅を八日に改定す」という記述が残っているそうです。「改定す」という事は、もともとムーチーは12月8日ではなかったという事になります。
前回紹介した伝説では、鬼を退治したのが12月8日という事でしたが、伝説から数百年後に「八日に改定す」の記述がある事から、ひょっとしたら鬼退治をした日は別の日(もしくは不明)であり、改定の後、伝説の方が書き換えられて「12月8日に鬼退治した」となった可能性もありますね。
さて、この「旧暦12月8日」なんですが、実は重要な日なのです。事納め(事八日・ことようか)と言われる特別な日なのですが、それについて少しくわしくお話しをしましょう。
「年神様(としがみさま)」という、年を司り、正月に人間界に降りてくる神様がいます。その神様が正月に向け「年越し」や「元旦」に向け準備を始めるのが旧暦の12月8日と言われ、その日は「神様にとっての事始め」になります。神様がいろんな「神事」を行い、全ての事が終了するのが旧暦の2月8日で、その日は「神様にとっての事納め」になります。
同時にこの旧暦2月8日は、神様を迎える正月行事を終えた人々が、通常の生活を始めるという事で「人にとっての事始め」の日でもあります。そしてまた旧暦12月8日には神様を迎えるため、日常生活をいったん終えるという事で「人にとっての事納め」が旧暦の12月8日にあたるわけなんですね。
神様が神様として活動する期間、そして人が日常生活と神様を迎え入れる期間が区別されていて、「神様にとっての事始め」が「人にとっての事納め」、「神様にとっての事納め」が「人にとっての事始め」となるわけです。面白いですね。
という事で、ウチナーンチュがムーチーを食べる旧暦の12月8日は「神様が活動を始める日」でもあるのです。さて、ムーチーは「鬼を退治するための餅」だったわけですが、この「鬼」と「神様」の関係をご存じでしょうか?
日本に現存する文献で確認できる最も古い「鬼」は、「出雲国風土記(いずものくにふどき)」に登場する「阿用郷の鬼(あよのさとのおに)」だと言われています。この鬼は旧暦の12月8日にやってくるという伝承があり、人間達は魔よけのため、竹竿の先に目籠(めかご)とヒイラギの枝をつけて軒先に飾る習慣があったそうです。
12月8日は神様の事始めの日なのに、その日に鬼がやってくる?
そんな疑問を持つ方もいるでしょうが、 実は「鬼」というのは、もともと「荒ぶった神様」の事を言うのです。旧暦12月8日は神様にとっての事始めで、人間界に神が降りてくるわけですが、本来は「神様が降りてくるので、我々人間は慎んで家の中で過ごしましょう」という日でした。
しかし、いつしかその意味がすりかわり「悪いものがやってくるので、家でじっとしている」という形で伝わるようになりました。
「神がやってくる」が「荒ぶる神がやってくる」となり、「荒ぶる神は鬼」となり、さらに仏教の地獄に出てくる「鬼」と結びついて、いつしか元々の「神」とは違う完全に悪しきもの「鬼」としての地位が確立してしまったのです。
沖縄・宮古島の「パーントゥ」も神様だし、秋田県で有名な「なまはげ」も、ちゃんとした神の使いですからね。
ちなみに旧暦の12月8日は、中国でも邪気を払う日とされているそうです。これらの風習も全て結びついて、沖縄の「ムーチー」という風習が確立したのでしょう。旧暦の12月8日は「子供の成長を祈り、邪気を払うため、ムーチー(鬼餅)を食べる」という形で。
ちなみにムーチーは本来、子供の年の数だけヒモでくくって、すだれ状に吊しておくものです。最近ではそれを見る機会は減りましたが、まだやっている所はあります。
沖縄には昔から「クバの葉を十字に結んで、軒先に吊るし邪気を払う」風習があり、それが「ムーチーを吊す」に結びついたと言われています。さきほど述べた「阿用郷の鬼(あよのさとのおに)」について、「魔よけのため、竹竿の先に目籠(めかご)とヒイラギの枝をつけて軒先に飾る習慣があった」とも繋がっていそうですね。
ムーチーについて調べれば調べるほど、前回紹介した伝説だけが全てではないというのがわかります。「神がやってくる日」「鬼」「邪気払いの風習」など、日本だけでなく中国からの思想も伝わってきており、非常に興味深いですね。
さて… いよいよ今度の日曜日、2016年1月17日がムーチーの日です。今、マルキヨ製菓はフル稼働でそのムーチーを製造しております。賞味期限の関係で、行事の手前、ギリギリでしか製造できないお餅なのです。
そこでなんですが、今、お読みのこのブログ「お菓子な琉球話」では、1月16日(土)に「マルキヨ製菓のムーチー」を紹介するブログを更新します。毎週月曜・木曜更新のブログではありますが、今週は土曜日も追加更新!
というわけで、あさって土曜日にも、再びこのブログへお越し下さい。マルキヨ製菓の美味しいムーチー各種を、写真と共に紹介しますので!
今回はこの辺で。
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